原田ななせ

原田ななせのページへようこそ。現在は国立天文台科学研究部 の助教と併任で 総合研究大学院大学(略して総研大)の天文学専攻の教員もしています。総研大の所属がありますので修士、博士課程の学生の研究を指導することもできます。 もし以下のような研究に興味がある、もしくはどの分野に進むか迷っている学部生さんは気軽に相談してください。

私たちが住む天の川銀河から見て近くにある銀河、つまり構造などを詳細に調べることができる銀河の研究をしています。特にスターバースト銀河と呼ばれる星が 活発に作られている銀河であったり、活動銀河核という銀河の中心にある超巨大ブラックホールが質量を降着している銀河核を持つ銀河を研究しています。 宇宙全体の歴史を見れば星形成の頻度やブラックホールの成長はビッグバンから2-3億年後程度の時代に最も顕著でした。現在では宇宙全体としてはそう言った 活動性は低くなりましたが、幾らかの銀河ではこうしたスターバーストや活動銀河核が見られます。こうした銀河の研究は星形成が活発であった時代に銀河が どのような経路を辿ったのかを調べるのに役に立ちます。

星間ガス、特に分子ガスはスターバーストや活動銀河核の重要な要素です。ガスは密度の高い環境では分子の形をとりますが、星はそうした高密度のガスの中で生まれます。 ブラックホールもガスを”食べる”ことで成長していきます。銀河の中心領域ではガスは原子やイオンよりも分子の形で存在しますので、 銀河核周りの分子ガスはブラックホール質量降着の貯蔵庫となります。こうした分子ガスの中で一番存在量の多いのが水素分子ですが、それは生還ガスのような 大半が冷たいガスでは観測が大変困難です。そこで、代わりに分子ガスの量を測るのに一番よく使われるのが一酸化炭素です。 しかし、それ以外にもたくさんの分子が星間物質の中では検出されてきました。こうした様々な分子がどう言った量あるのか、その分子の組成を調べることで 星間ガスの物理条件を調べることができます。こうした分子組成と 宇宙物理的な環境の関係を調べる分野をアストロケミストリー(星間化学)と呼びます。

激しい星形成からでる紫外線、その大型星が死んだ時に出る宇宙線、また活動銀河核から出るX線は分子組成に影響を与えることが期待されます。 そのためこうした銀河では特徴的な分子組成があることが予想されますが、それを天の川の銀河系の外で高解像度で分解して観測することは困難でした。 しかし、アルマ望遠鏡によって現在は次々と新たな観測結果が出ています。 その中でも最も徹底的に一つの銀河の分子組成を調べる挑戦的な研究、ALCHEMI がALMAの大型プログラムとして行われましたが、私はそのPIのうちの一人としてこの分野の発展を進めています。

スターバースト銀河の例(NGC 3256)。 二つの銀河が衝突することによってスターバーストが引き起こされた。 (左)ハッブル望遠鏡による可視光の観測(右)アルマ望遠鏡による複数輝線の観測。北、南に位置する2つの銀河核の 周りの分子ガスがはっきりとわかる。